いわし

弱い魚っていう漢字がかわいい


CALENDER  NEWENTRY  CATEGORY  COMMENTS  TRACKBK 
ARCHIVE  PROFILE  FAVORITE  AMAZON  ETC.
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | - | posted by スポンサードリンク
(・○・)

身内用、想い書き

国西で、色々勝手に  いろいろ ↓



-------------------


あれから7年が経った。
24歳になった。

役者になった。

芝居が楽しかったかどうか…よくわからない。
でも、楽しいと、充実していると、これこそが俺の天職なのだと。
これしかないのだと自分自身に言い聞かせるしかなかった。

これ以外のすべてはあの日本当になくなったのだから、そこはあっている。
ただ、それを差し引いてもこんなに没頭できたのだから、
少なからずは芝居に好かれていたのかもしれない。


「お前ね、俺から花形の座を奪っておいてよくそんな事が言えるよな。」

市太郎は苦々しく笑って、俺の髪の毛をわさわさとかきまぜた。

「お、髪、もう黒い部分出てきたな…」

「ああ、染めなきゃ」

「いい加減やめりゃあいいのに。」

「…気に入ってるんだよ。」

市太郎はふぅん、と鼻を鳴らして そのまま部屋を出て行ってしまった。


市太郎が荒らしていった髪に手櫛を通すと、毛の先で指が躓いた。
色の薄い金髪が更に白く、
中身が抜け落ちているかのように鈍く光に透けている。

昔、何か良い事があった時、
それを独り言のように話し聞かせられながら、よく頭を撫でられた。
その時の手つきは、いつもとは別人のように優しく穏やかだった。
気に入ってくれていたのだと思う。


国分さんが今の俺を見たら
なんと言うのだろう


「市太郎!あんた早く仕度をしなさい。今日はテレビが入るんだからね!」

突如、座長の細く強い声が俺の感傷に割って入ってきた。
市太郎もそれに返したようだが、よく聞こえない。

俺は自分の着替えを始めた。





それから数日が経ったある日の朝、
食事の時間になっても恒子が部屋から出てこないと座員が話している。

座長なしで食事を始めるわけにはいかないので、俺が呼びに向かう事になった。
(俺は恒子に気に入られているから、こういった面倒事はよく押し付けられる。)


引戸のガラス越しに恒子の影が見える。
手の甲でガラスを数度叩いた。

「座長?どうかされたんですか?」

影は動かない。

「…恒子さん?」

腹も減っていたし少しむかついたので、反応のない扉をそのまま開けた。

恒子はイスも座布団もない床に座り込んでいた。
裾が乱れている。投げ出された手の平が力なく天に向いている。

「恒子さん、」

「国分が、倒れたって…」

「え?」

「国分が撃たれたって」

恒子の瞳が赤く潤んでいた。

俺は体が全ての動作を忘れてたように、
どこも  なにもできなかった。


......7/3↓


大きく、世界が揺れ落ちたようだ。




パタパタと乾いた音がする。
視界がじんわりと明るくなって、ぼんやりとしていたら、
目の前が市太郎の顔でいっぱいになった。


「よぉ、
お前ってさー、意外と体弱いのな。知恵熱てゆーの?
それでぶっ倒れる奴はじめて見た。」


市太郎は俺に向けていたらしい団扇を自分の顔に向け、扇ぎはじめた。
ぱたぱたぱた


「びっくりしたよ、
母さんがあんな状態になったのもだけど、お前もさ。
国分が死ぬって、気を失うほどショックなんだね。」

「…そんなことない。」

体を起こそうとすると、頭の奥がふらつく。力が出ない。


「そんなこと、あるじゃん。」

「ない!それに、まだ国分さ…あの人が死んだって決まったわけじゃない。」

市太郎に背を向けるようにして体を転がして、起こした。

「撃たれたんだろ、あの老体が生きてるかよ。
死んだに決まってる!」


「きまってない!」

「まだあいつに未練があるのかよ?
自分のことを捨てた奴にまだこだわるのかよ!」



ちがう、



「ちがう、捨てたのは…俺の方だ…」



テレビなんて関係ない。
沼田達に手を貸す事、それだけで裏切りになる。捨てられる。
わかっていたはずだった。


それでも、俺はステージに出る事を選んだ。
あの瞬間、俺は裏世界と国分さんを捨てた。


「は?結果的に捨てたのは国分だろ。許すかどうかなんてあいつの匙加減じゃないか。」


国分さんは匙を持たない。
総ての物事の決定を、最初から決めているから。
国分さんはどうしたって、ああするしかなかった。

でも、国分さんは言っていた。
『お前のその姿がテレビで全国に放送される、致命的だよ』
致命的?
テレビがなかったら、国分さんは俺を許したのだろうか?
沼田に手を貸した俺を?



捨てられたからじゃない、

俺が、捨てたから未練があるのだ。


23:56 | - | comments(0) | trackbacks(0) | posted by 夏見
スポンサーサイト
23:56 | - | - | - | posted by スポンサードリンク
Comment








Trackback
Trackback URL : トラックバック機能は終了しました。
<< NEW | TOP | OLD>>